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フォギー湖

研究テーマ:日本人の美意識

Prefectural University of Kumamoto  

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TAKAHASHI  Laboratory

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​日本の空間美に関する既往研究

網羅的美学の成立を見なかった我が国にとって、今日一般的に語られる美学は、いわゆる西洋美と言える西洋の価値観や歴史によって成立した美学を指す。

また建築分野における美すなわち建築美も同様に今日語られるものの多くは西洋建築美である。

西洋建築の分野では、これまで多くの建築書が記され建築美に関する多くの論考が見い出せる。

まず、ヴィトルヴィウスの『建築十書』では、美の主要な要因として、シンメトリア(建物各部の寸法の比が簡単な数字で表されること) を挙げている1)。

 

このヴィトルヴィウスの建築書の後、建築が従うべき規範となるような建築書は、中世では見あたらず、近世になってようやく、アルベルティ(Leon Battista Alberti、1404-1472)の『建築書』が見い出せる。これは、ヴィトルヴィウスの『建築書』とローマ遺跡のオーダーを観察し、その建築理論を『建築論』としてまとめたが、建築において主要な装飾は疑いなく円柱であるとしながらも、単にこれらのオーダーを考察の結果として記載し、構成しただけであった1)。またその後発表された、アントニオ・フィラレーテ(Antonio Averlino(Filarete)、1400-1469 頃)や、フランチェスコ・ディ・ジョルジョ・マルティーニ(Francesco di Giorgio Martini, 1439-1501)等の建築書もあるが、これらにオーダーに関する明確な理論は語られていない1)。

16 世紀後期のセバスティアーノ・セルリオ(SebastianoSerlio,1457-1554)の『建築書(L’Architettura)』によって、2世紀に渡るオーダーの展開は集約される。ルネサンス期の建築家にとって、オーダーは建築美の究極の姿であるとされ、これは無批判に受け入れられ、建築論は、いかなる比例関係が最も美しいのかという点に絞られていた1)。

 

17 世紀になって、クロード・ペロー(Claude Perrault,1613-1688)は、古代からルネサンスにいたるオーダーの比例に全く統一性がないことを指摘し、オーダーに内在する絶対的な美というものに対して疑問を呈したが、比例と美の関係に対する議論はしばらくのあいだ続けられた。しかし、18 世紀には、オーダーはもはや単なる装飾とみなされるようになり、その象徴性は失われ、古典主義建築を表すだけの記号とされた。このほかにも、アンドレーア・パッラーディオ(Andrea Palladio,1508-1580) の『建築四書』やジョン・ラスキン(John Ruskin 1819-1900)の『建築の七燈』等が見いだせる6)。ジョン・ラスキンの『建築の七燈』は、これまでの建築書と違い、道徳、倫理的視点からの建築論であり、これまでの建築書と一線を画すものであった。このように、美を求めてきた建築の分野において、建築が従うべき「規範」となるような多くの建築書は、ヴィトルヴィウスの『建築書』を基にしたもので、造形的なオーダーや、比例に関するものがほとんどであった。

19 世紀には、この比例の問題に関して、フェヒナー(von Gustav Theodor Fechner,1801-1887)が、有名な黄金比に関する実験を行っている。これは美を自然科学的に検証する実験のはじめとして注目すべきするものであるが、今日このような比例が絶対的な、唯一の美を生み出すという考え方はほとんど信じられていない。またこの黄金比(黄金分割比)に関しては近年、批判的な論文が多く見られる。

 

これら西洋建築の分野における美に関するものを、日本人が網羅的にまとめたものとして井上の『建築美論の歩み1)』がある。これは、西洋における建築美に関する論考を、古代から近代までを総覧しまとめたもので、今日西洋建築美に関するバイブル的存在である。

 

また、上松による建築空間論における空間の美に関する一連の考察2~8)は、近代西洋における建築空間論の系譜を総覧しながら、建築空間的な美に関する考察を行った貴重な研究と言える。

日本建築の分野において美を扱った論考は、有名なものでブルーノ・タウトの『日本美の再発見9)』、ドナルド・キーンの『日本人の美意識10)』がある。前者は、伊勢神宮と日光東照宮を例に挙げ、日本建築の二元的性格、つまり相反する諸要素の絶対的対立を指摘し、昭和初期において、桂離宮、伊勢神宮、飛騨白川の農家、秋田の民家などに日本建築の美を再発見し、日本人に再認識させた功績は大きい。後者は、日本人の美意識の特徴を「暗示または余情」「いびつさ、ないし不規則性」「簡潔」「ほろび易さ」などに見い出し、曖昧性にひそむ日本の美学を指摘するなど、双方とも日本人ではなく外国人による日本美の考察が興味深い。

 

また、谷崎潤一郎の『陰影礼賛11)』は、古の日本では陰翳を認め、その陰翳の中でこそ映える芸術を作り上げたことを建築、紙、食、化粧、色彩など多岐にわたる陰翳の考察を行い、この陰翳こそが日本古来の美意識・美学の特徴とした。

 

吉村による『日本美の特質12)』は、「わび」「さび」「幽玄」といった概念ではなく、「点」「線」「面」といった多角的視点からの日本美の検証を行っている。同じく吉村による『日本の空間構造13)』では、宇宙軸、柱の意味、逆遠近、凝縮と拡がりなどの視点から日本美を論じたものがある。

 

井上による『日本建築の空間14)』は、建築史と建築美学との融合を目指し、日本建築の空間特性を論じたものがある。

 

また神代による『間( ま)・日本建築の意匠15)』は、日本人の空間意識や空間意匠における間の視点から、日本建築の美を示したものなどがある。

 

伊藤による『日本デザイン論16)』は、華道、茶道、日本庭園、日本建築史などを西洋的な概念によって説明しようというものもある。

 

更に小林の『建築美を科学する17)』は、心理学的美学の立場から、建築美を体系的に論述図解したものであるが、黄金比、プロポーション、シンメトリーなど、西洋的美の視点での論述である。

 

建築の分野に限らず、日本美に関する論考は、本居宣長18)による「もののあわれ」や九鬼周三19)による「いき」に関する考察が見出せるが、田中は『日本美を哲学する20)』において、「あわれ・幽玄・さび・いき」などの日本の伝統的美意識を、和辻哲郎、九鬼周造、大西克礼、岡倉天心といった近代日本の知の巨人たちの言葉を通じ、和歌、俳諧、茶の湯、能、浄瑠璃、建築、仏教美術などから浮き彫りにしたものがある。

その他、直接的な建築の分野ではないが芸術の分野における空間的視点での、日本美を扱うものとして高階の『芸術空間の系譜21)』『日本人にとって美しさとは何か22)』『西洋の眼 日本の眼23)』などがある。

 

ただし、 このように建築の分野に限らず、これまで美に関しては哲学的考察が多くを占めているが、フェヒナー以降、実験心理学的な検証もいくつか行われ、いわゆる黄金比に関する研究として、建物平面や立面における長さの比率等の報告24,25)や、街並みに関する美しさの考察26)が見い出せる。

  1. 井上充夫:建築美論の歩み,鹿島出版会,1996.5

  2. 上松佑二:建築空間論の系譜とその成果についての研究( Ⅰ ) -建築空間論の諸問題-、日本建築学会論文報告集第291 号pp.101-109、1980.05

  3. 上松佑二:建築空間論の系譜とその成果についての研究( Ⅱ ) -建築空間論の系譜:第一期(1860 ~ 1900) -、日本建築学会論文報告集第295 号pp.125-132、1980.09

  4. 上松佑二:建築空間論の系譜とその成果についての研究( Ⅲ ) -建築空間論の系譜:第二期(1900 ~ 1940) -、日本建築学会論文報告集第299 号pp.155-165、1981.01

  5. 上松佑二:建築空間論の系譜とその成果についての研究( Ⅳ ) -建築空間論の系譜:第三期(1940 ~ 1980) -、日本建築学会論文報告集第302 号pp.153-162、1981.04

  6. 上松佑二:建築空間論の系譜とその成果についての研究( Ⅴ ) -建築空間と機能-、日本建築学会論文報告集第306 号pp.138-147、1981.08

  7. 上松佑二:建築空間論の系譜とその成果についての研究( Ⅵ ) -建築空間とフォルム、日本建築学会論文報告集第315 号pp.154-162、1982.05

  8. 上松佑二:総合感覚体験としての美的空間体験-建築空間論の系譜とその成果についての研究( Ⅹ ) -、日本建築学会計画系論文報告集第350 号pp.74-85、1985.04

  9. ブルーノ・タウト:日本美の再発見 増補改訳版、岩波書店、1962.02

  10. ドナルド・キーン: 日本人の美意識、中央公論新社、1999.04

  11. 谷崎潤一郎:陰翳礼讃、 中央公論新社 改版、1995.09

  12. 吉村貞司:日本美の特質(SD 選書 20)、鹿島出版会、1967.10

  13. 吉村貞司:日本の空間構造(SD 選書 173)、鹿島出版会、1982.08

  14. 井上充夫:日本建築の空間 (SD選書 37)、鹿島出版会、1969.06

  15. 神代雄一郎:間( ま)・日本建築の意匠(SD 選書)、鹿島出版会、1999.06

  16. 伊藤ていじ:日本デザイン論 (SD選書5)、鹿島出版会、1966.02

  17. 小林盛太:建築美を科学する、彰国社、1991.05

  18. 本居宣長:紫文要領、岩波書店、2013.9(復刻版)

  19. 九鬼周三:「いき」の構造, 岩波文庫、2016.3(復刻版)

  20. 田中久文:日本美を哲学する あはれ・幽玄・さび・いき、青土社、2013.08

  21. 高階秀爾:芸術空間の系譜 (SD選書 19)、 鹿島出版会、1967.09

  22. 高階秀爾:日本人にとって美しさとは何か、筑摩書房、2015.09

  23. 高階秀爾:西洋の眼 日本の眼、青土社、2001.02

  24. 佐野潤一:ミース・ファン・デル・ローエの作品における黄金比についての研究、日本建築学会計画系論文報告集No.453 号pp.153-158、1993.11

  25. 和田菜穂子:設計プロセスに基づく平面構成における黄金比とジオメトリーの分析 : 坂倉準三設計の神奈川県立近代美術館のプロポーションに関する考察( その1)、日本建築学会計画系論文報告集No.453 号pp.205-209、2005.11

  26. 芦原義信:街並みの美学、岩波書店、1993.3__

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上記のように、日本における美を表す言葉は、クハシ(細)、キヨラ(清)、ウツクシ(細小)、キレイ(清潔)、と入れ代わって来たことになる。日本人の美の意識は、清なるもの、潔なるもの、細かなものと同調する傾向が強い

「かすか」なもの、「ほのか」なものに美を認めるのは、日本の伝統であったと言ってよい。ひたすらなもの、あらわなものは避けられた

古の日本人が持っていた、さりげない深い配慮を尊び、決して誇張しないという奥ゆかしさの美であり、 今日の日本人が失いかけている美の言葉と言える

日本の美的概念に関する時代推移とその構成モデル-美的空間創造のための基礎的研究-髙橋浩伸:芸術工学会誌 第77号、pp.158-165、2018年10月

日本の美的概念に関する時代推移とその構成モデル

-美的空間創造のための基礎的研究-

髙橋浩伸:芸術工学会誌 第77号、pp.158-165、2018年10月

​論文要旨​

  • 国語学における知見を基に、古代から現在までの日本の美的言葉の時間的推移を調査・整理し、その構成モデルを作成する

日本の美と西洋の美

  • 高階によれば、近代以前の西洋の美は、合理的な原理に支えられているとし、日本の美は、もっぱら感情に支えられたものであって合理的な拠り所を必要としない

研究の目的

  • 今日失われつつある日本の美を古代から現在まで時間的推移を調査・整理し、日本の美の構成モデルを作成し、その概要を把握すること。そのために、まず日本の美に関する言葉に着目し、古代からの現代においての時間推移と意味・内容の変遷を調査。

日本人の美的概念の時代推移

「うつくしい」​

  • 奈良時代の人々は「うつくし」を、親に対する愛情、妻子に対する愛情を表していた

  • 奈良時代以前は、自分より弱い者、幼い者をいつくしむ肉親の情を表す

  • 平安時代には小さいものに心を引かれるようすを客観的に表すようになり、その後美一般を表すようになった

「くわし(くはし)」​

  • 美一般を表す言葉は、奈良時代に「くわし」

  • 奈良時代では【美麗である】という意味を持っていた

「きよし」​

  • 平安時代になると、「きよら」または「きよげ」という言葉が使われはじめる。これはだいたい今日われわれのいう「美しい」に当たる​

  • 「きよら・きよげ」の源は「きよし」である

「きよら・きよげ」​

  • すがすがしく】という意味で用いられた

  • 「さやけし」は、「きよし」とほとんど同じような用いられ方をした

  • 「きよし」は、【何もない】という意味を持っているのに対し、「さやけし」は、【積極的な、はっきり】といった意味合いが含まれている

「おもしろし」​

  • 現代語の「おもしろい」の【こっけいだ】という意味は、江戸時代以降のもの

  • 奈良時代、平安時代には、「おもしろし」は、美しい景色を形容する言葉

  • 心楽しい意味に移り、音楽の楽しみ、人々と遊ぶおもしろさと使うように変わっていった

「うるわし」​

  • 端麗、壮麗

  • きちんと整った美しさを、ほめたたえる気持ちを表す。欠けたところがなく、完璧な様子。やや堅苦しさを感じさせる美しさでもある

  • 「うるわしい」 は、「うつくしい」とはまったく違っては整って立派だ、端正だということを讃めたたえる気持を表す言葉

「きれい」​

  • 「綺麗」は室町時代に、汚れのないこと、清潔なことの意味をもっていた

「なまめかし」​

  • 平安時代の宮廷で最も高い美の範疇の一つ。「なまめかし」は、そのもともとの意味をいえば、【未熟めいている】【未熟らしい】。十分の心づかいがされているが、しかも未熟のように見える。さりげなく、何でもないように見える。それが「なまめまし」であった。派手で、鮮やかな色や、紅葉の盛りのようなものは「なまめかし」とは言わなかった。「なまめかし」が、最高の美の一つとして、貴(あて、高貴)と並んで重んじられているのは、まさに今日いうところの日本的な美の感覚の一つが、この時代に確立されたということを示すものと見てよい。

  • また、古語辞典によれば、【さりげなく、未熟なように初々しく見えながら、じつは見えないところでゆきとどいた心遣いがされている美しさ、奥ゆかしさを表す】

「こころにくい」​

  • 対象がはっきりしなくて、強く関心をそそられる様子を指す。「かすか」なもの、「ほのか」なものに美を認めるのは、日本の伝統であったと言ってよい。ひたすらなもの、あらわなものは避けられた。

「さびしい」​

  • 孤独だということで、奈良時代には「さぶし」といった。平安時代、この「さぶし」という言葉は、「さびし」と変わってからも、あたりの景色が荒れ果てているとか、冬になって木の葉が落ちて「さびれて」いるという場合に使われた。鎌倉・室町時代に連歌の世界などで、この「さびしい」という言葉は、「ひえさび」として使われる。

「だて」​

  • だて」という言葉は、奥州の伊達家の家来が非常にしゃれたなりをしていたから「だて」と言ったのだと言われていた。しかし室町時代にすでに「だて」という言葉は用いられていた。【ことさらそのように見せる】【いかにもそれらしく見せる】といった意味を表す。古語辞典によれば、「だて」は【派手に振る舞うこと。粋な様子をすること。みえを張ること】

「もののあわれ」​

  • 平安時代に見られる「あはれ」という美意識は、四季の自然の移り行きに、こまやかな情趣を感じる心であり、また男と女の愛情がはかなく移ってゆくのを悲しむ言葉。千年にわたる日本人の美意識の中核として今日もなお生きている感覚。言葉そのものとしてはこれは今日にそのまま生きて使われているとはいえない。あらわな表現を避けて、洗礼された繊細さを重んじる

「さび」​

  • 江戸時代、俳諧が盛んになると「さび」が一つの大きな目標に掲げられた。静かに、純粋に、自然のなりゆくさまを味わい、そこに美を見出そうとする意志。寂寥と孤独に耐えて、むしろその中に美を見ること。

「わび」​

  • 貧しさに徹して、それに耐え、世俗の騒ぎから離れた美。「さび」が孤独に徹し、寂寥(せきりょう)を美にまで高めようとするものであるに対して、「わび」は、貧しさ、簡素さに徹した美しさを目指していた。

「幽玄」​

  • 中世の和歌・連歌・能などでの重要な美的理念。 言外に漂う奥深い情趣美。「幽玄」という言葉ははじめ仏教の世界で使われ、能という舞台芸術の一つの理念として使われるに至ったもの。「はるかに遠くて暗いところ」をいい、中国では具体的に「冥界・冥土」を指す言葉だった。

「いき」​

  • 江戸時代後期、江戸町人に好まれた美的概念とあり、【嫌味のないさっぱりとした、いさぎよい気立て・容姿・言動など】を指すもの。

「雅」​

  • 奈良時代から平安時代を通じての美的理念の一つとされ、【宮廷風または都会風で品格のあるさま】【洗練された風雅、優美】。

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SD法評価サンプル(エレメント)

評定結果の平均によるプロフィール

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日本人の美意識に関する基礎的研究

髙橋浩伸、大井尚行:芸術工学会誌 第35号pp.56-61、2004.10

​論文要旨​

現代の我々日本人の美意識はというと、混沌として、何が「美」で何が「醜」かの区別さえも難しい状況にある。このような混沌とした現代において、新たな「美」の概念を見いだし、一つの方向性を示すことは、大いに意義のあることと考える。そこで、その新たな概念として、本論では「あいまい」という概念を提起し、「あいまい」という概念が「美」の概念であることを実証することを本論の目的とする。その方法として以下の2つの方法で検証を行った。

  1. 「あいまい」という「美」の概念を、既存の日本的な「美」の概念である、「わびさび」「幽玄」等の概念に見出す。

  2. D法を用いた印象評価実験にて「あいまい」が美の概念であることを確認し、更に「あいまい」が美の概念概念の階層構造においてどのような位置づけにあるのかを検討する​。

上記のような方法によって、2章においては、「あいまい」という概念が「美」の概念として、「わびさび」や「幽玄」といった日本的「美」の概念の中に見いだせた。さらに3章においては、「あいまい」が、が美の概念であることを確認できた。この「あいまい」という美の概念の存在が確認出来たことで、混沌とする現代の日本人の美意識に対して、新たな一つの方向性が示せたものと考える。

研究の背景

一般に日本人の美の概念としては「わびさび」や「幽玄」「いき」等が知られている。これらは、中世以降に成立したものであり、それ以前の「美」の概念としては、汚れのないものを指して言う「きよし」や清らかなるものを指す「キヨラ(清)」などがあげられる。一方、西欧の美の概念としては、古代ギリシャからの「比例(proportion)」や「均衡(balanse)」や「調和(harmony)」「対称(symmetry)」などから、ルネッサンスやバロックに至っては、それまで美的対象として省みられなかった自然美に対しての、「崇高(the sublime,das Erhabene)」や、文芸における、「悲壮(das Tragische)」「滑稽(das Komische)」等があげられる。そしてさらに、写実主義の風潮に従って、「醜の美学」を主張するものも現れ、「美」の対極の「醜」までもある意味では積極的意義を有するものとされている。このように見てくると、洋の東西を問わず、「美」の概念とは時代とともに変化し、より多様化していることが解る。さらに21世紀の今日においては、何が「美」で、何が「醜」かの区別さえも難しく、「醜」と思われるものまでを「美」と言ってしまうことに、現代の美の概念の混迷を感じるのである。​

研究の目的

  • このように混迷した現代の美の概念において、今後の進むべき美の方向性を示すことは、大いに意義のあることと考える。すなわち、進むべき美の方向性を示すことで、巷に煩雑する決して美しいと言えないデザインを少なくし、「美しいもの」の創造に寄与できると考えるからである。それには、現代の日本人の美意識における、新たな美の概念を見出し、今後のデザインの分野における一つの方向性を示す必要がある。その新たな美の概念の一つの手がかりとして、ドナルド・キーンの『日本人の美意識』がある。キーンは、日本人の美意識として「暗示または余情」や「いびつさ、ないし不規則性」「簡潔」それに「ほろびやすさ」などをあげている。その中でも、日本人の美意識の特徴として、「暗示・余情」を生じさせる日本語のあいまい性を述べている。ただ彼は、「暗示・余情」を日本人の美意識の特徴的な美の概念としているが、「あいまい」に関しては、「暗示・余情」を生じさせる要素としてしか取り上げていない。そこで、著者らは、この「あいまい」という概念に注目し、この概念こそ現代日本人の美意識として、デザインの分野における今後の方向性を示すことができる、新たな美の概念であると考える。この「あいまい」という概念は、我々日本人の国民性や文化面等に多く見られる特徴であるが、この概念が、過去、美の概念として直接用いられた例は見いだせなかった。
    したがって、本研究において「あいまい」という概念が、美の概念として日本人の今後の進むべき美の方向性を示す重要な概念であることを確認し、「美しいもの」の創造に寄与することを本研究の目的とする。

     

「あいまい」の定義

「あいまい」という概念は、近年の科学技術の分野における、ファジィ(あいまい)理論などに見られるように、大変注目された概念でもある。そこには“余裕”や“遊び”やといった意味合いが含まれるのであろうが、同じような意味での「あいまい」は、日本人の服飾文化や思想にも見いだせる。また一方、国際社会において批判的な意味での、日本人の民族性を「あいまい」と表現したり、日本人の話す日本語も「あいまい」な言語だと言われている。
 『広辞苑(第5版)』にて「あいまい」の意味を調べると、「確かでないこと。まぎらわしく、はっきりしないこと。」とある。すなわち不明確、不明瞭なもの・ことを指すと考えられる。

この「あいまい」という言葉は、古くは11世紀に見いだせるが、言葉の意味は今日とあまり違わない。それ以前には『王朝語辞典』にも見いだせない。また『角川古語大辞典第1 巻』によれば、“漢語”とあり、『大漢語林』にて「曖昧(あいまい)」の意味を見てみると、「はっきりしないこと。あやふやなこと。」とある。したがって、11世紀前後に日本に伝えられた言葉であると考えられる。 逆に時代を下って、『江戸語大辞典』『江戸語辞典』を見てみると、「あいまい」の語は見いだせない。しかし19世紀に書かれた『文明論之概略』には現在と同じような意味の「曖昧(あいまい)」が見いだせる。また同じく19 世紀の『西国立国志』には、曖昧(あいまい)を“うすぐらき”と読むこともあったが、意味としては、現在と違わない。
 また、『新和英大辞典(第4版)』によれば、英語における日本語の「あいまい」は、vagueness:あいまいさ、ambiguity:多義性、obscurity:不明瞭とある。また、このほかに、uncertain:不確かな、不定の、変わりやすい、ともある。したがって本論では「あいまい」という概念を、「不明確、不明瞭、多義的、不定的、流動的」なもの・ことを指すと定義する。

日本人の既存の「美」の概念

高階秀爾によれば、日本語で言う「美しい」という言葉が、今日の我々が使っているような意味を持つようになったのは、おおむね室町時代以降だという。上代(およそ奈良時代まで)においてはひらがなでの「うつくしい」という言葉が、親しい人への愛情や、小さいもの、可憐なものに対する愛情を表す言葉であり、やがて美的性質一般を意味するものに昇華していったということは、日本人の美意識が、自分より小さいもの、弱いもの、保護してやらなければならないものに対して向けられていたといえる。また、上代の人々は美しいものを「きよし」と呼んでいた。上代の日本人の「美」を表す概念は、クハシ(細)、キヨラ(清)、ウツクシ(細小)、キレイ(清潔)と変化しており、清なるもの、潔なるもの、細かなるものに同調していたと考えられている。
中古(平安時代)には、「みやび」や「をかし」、「なまめかし」等の「美」の概念が成立する。そして中世(鎌倉・室町時代)には、「わび・さび」や「幽玄」といった「美」の概念が成立する。 近世(江戸時代)には、「いき」等の「美」の概念が成立する。さらに近代(明治以降)になると、これまでの日本人の「美」の概念と異なる、西欧的な「比例(proportion)」や「調和(harmony)」「対称(symmetry)」「均衡(balance)」といった「美」に、多くの人々の目が向けられた。しかし、逆に欧米人たちによる、日本の「美」の再発見がなされ、その中でブルーノ・タウトは日本芸術の特徴として、「単純さ」という概念をあげ、伊勢神宮や桂離宮を絶賛している。またドナルド・キーンは、日本人の美意識として「 暗示または余情」や「いびつさ、ないし不規則性」、「簡潔」、それに「ほろびやすさ」などの「美」の概念をあげている。

​(仮説)「美」の概念の階層構造

現在の認知心理学においては、我々は日常ごく当たり前のこととして、外界の事象に対して、「カテゴリー化」を行っている。カテゴリー化することで外界の状況を記憶したり、他との区別を行うが、そのカテゴリー化には、いくつかのレベルがある。例えば“学校のいす”も“社長のいす”も“いす”である、というのもカテゴリー化だが、同時に“いす”も“机”も“家具”であるというのもカテゴリー化である。つまり“学校のいす”は“いす”であり、“いす”は“家具”である、というように、カテゴリー化は階層的につながっている。

ロッシュら(Rosch,Mervis,Gray,Johnson,& Boyer-Braem)によれば、外界の構造をよく反映し、さらに認知的にも最も情報がゆたかに効率よくとらえられる概念のレベルを「基礎レベル(basic level)」と呼び、例えば“いす”はこの基礎レベルの概念に当たり、“いす”を含む“家具”は、「上位レベル(superordinate level)」に当たる。また“いす”に含まれる“学校のいす”は、「下位レベル(subordinate level)」の概念に当たる。


この概念の階層構造に日本人の「美」の概念を表現するときに用いられる言葉を当てはめてみると、仮説として(表-1)のようになると考えられる。この仮説においては、基礎レベルには、「日本的美」や「西欧的美」が位置し、下位レベルに「わびさび」「幽玄」等が考えられる。さらにここでは「わびさび」「幽玄」等と同じ下位レベルに「あいまい」を位置づけしている。また、「わびさび」「幽玄」等の日本の伝統的な美の概念と「あいまい」との概念図を仮定すると、(図-1)のようになると考えられる。
 

既存の日本的美の概念と「あいまい」

「わびさび」と「あいまい」

『広辞苑(第5版)』に「わびさび」の語はなく、「わび」「さび」のそれぞれの意味を見てみると、「わび」とは、飾りやおごりを捨てたひっそりとした枯淡な味わい。「さび」とは、古びて趣のあること8)とある。したがって「わびさび」とは、飾りの無い清楚で簡素な古びた趣のことと考えられる。その意味するところの飾りの無い簡素さは、空白・余白を意味し、それは見るものに無限の美を想像させ「多義的」で「不明確、不明瞭」と言える。この「多義的、不明確、不明瞭」こそ、すなわち「あいまい」であり、「わびさび」の概念に「あいまい」という概念が見いだせる。

「幽玄」と「あいまい」

幽玄とは、余情を楽しむ芸術的「美」の概念と言える。すなわち「幽玄」とは、今、眼の前にある姿・形の美しさだけを楽しむのではなく、そこに隠された姿の意味や美しさを想像することで、感動に深みを与えること22)と言える。世阿弥の記した『風姿花伝』にも「秘する花を知る事。秘すれば花なり、秘せずば花なるべからず、となり。」とある。すなわち「幽玄」とは隠されたもの、秘するものがあってこそ、美を生み出すということが言える。したがって「幽玄」という概念には、秘するもの、すなわち「不明確、不明瞭」なものが重要な「美」の要素として存在しているということになる。このように「幽玄」という概念にも「不明確、不明瞭」すなわち「あいまい」という「美」の概念が見いだせる。

「いき」と「あいまい」

日本の色彩文化の中に、「四十八茶百鼠」いう言葉がある。この言葉からもわかるように、我々日本人は古くから鼠色や茶色を愛してきた。室町時代には禅などの影響もあり、水墨画では「黒は五色を兼ねる」といわれ、黒を薄めた色の濃淡によって微妙な表現を持つ鼠色は、芸術の分野などでの美しい色として認識されていた。江戸時代も中期以後になると、庶民は赤や紫などの派手な色は禁じられ、茶系統・鼠系統・藍色系統に限られていたので、流行色もその中に限られた。九鬼は当時の「いきな色」として、鼠ふかがわねずぎんねずあいねずうるしねずべにかけねず系統では、深川鼠・銀鼠・藍鼠・漆鼠・紅掛鼠などをあげている。このように「いき」な色とされる鼠色は、「不明確、不明瞭」「多義的」な感覚をイメージさせる。したがって「いき」という概念にも「不明確、不明瞭、多義的」すなわち「あいまい」な概念が見いだせる。

「暗示」と「あいまい」

暗示の空間で一般に知られているのが、石庭で有名な竜安寺の庭園があげられる。竜安寺石庭は、大海に散在する島を象徴していると言われている。しかし、はっきりした作者の意図は依然謎のままである。竜安寺の庭園に関する解釈は、現在まで人により、時代によりさまざまであったが、過去においてそうであったように、現代においても定説というものはない。しかし竜安寺の石庭は常に名園とうたわれ、常に人びとの関心の対象となり、長年人々の心をうち続けてきたのである。したがって「暗示」にも「不明確、不明瞭」すなわち「あいまい」という「美」の概念が見いだせる。

「不規則性(左右非対称)」と「あいまい」

日本の伝統的建築は、古来より大陸の影響を強く受け、特に寺院建築においては、初期より左右対称性が強く、金堂、塔、中門が一直線に並んだり、塔を中心にして金堂が左右に配されたりしているが、法隆寺においては、形態の異なる塔と金堂を左右に置き、しかもその均衡を微妙に保つ距離や大きさのバランスの良さで配置されている。これは大陸にも例が見られず、日本独自のものといわれている。このような左右非対称な配置は、日本を代表する建築物の桂離宮の配置にもみられるが、神代30)によれば、中世の半ば頃からは一般の住居でも、特に住生活とかかわって、一つの建築、一つの屋根の下に、諸機能を集め合わせる傾向が現れ、外部にむかって本体から一部が突出したり、あるいは本体の片側に折れ違った部分が付加したりして、空間の左右非対称化が始まったとされる。また茶室にもこの「不規則性」が見いだせる。茶道における茶室の設えでは、常に重複を避け、部屋の装飾に使う品々は、色彩やデザインが重複しないものが選ばれる。生花があれば、花の絵は許されない。丸い釜を用いるのなら、水指は角のものが使われる。また床の間に花器や香炉を置く場合は、真中に置かない。これは空間を真半分に分けてしまうからである。床柱は、部屋の単調を破るため、部屋の他の柱と異なる材種の木を用いる。このように茶道文化における茶室の空間は、対称や重複を避け、わざと均斉を崩し、そのアンバランスな「不定的・流動的」な感覚、すなわち「あいまい」の中に「美」を見いだしてきたといえる。このように、左右非対称な「不規則性」にも「不定的・流動的」すなわち「あいまい」という概念が見いだせる。

「ほろびやすさ」と「あいまい」

日本の伝統的建築は、決して永久的ではない木材で造られ、やがては朽ちてしまう建物を、つねに新陳代謝して、つねに新しく、永遠に生きながらえんとしてきた。20年あるいは21年ごとに同一の形式のまま建て替えられる伊勢神宮の式年御造営はその代表的なものである。それは常に新陳代謝を繰り返し、滅び、再生を繰り返すのである。我々日本人は古来より、「ほろび」を見越して建物を建てたのである。また和歌などに見られる、この「ほろびやすさ」という概念は、ドナルド・キーンが、「日本人は、このほろびなくしては、美もあり得ないということを、敏感に意識していた。」というように、日本人の美意識における重要な「美」の概念であり、その意味するところは、普遍的ではなく「流動的」で、すなわち「あいまい」といえる。このように「ほろびやすさ」にも「あいまい」という概念が見いだせる。



 

実験-SD法による日本の伝統的空間における印象評価実験

実験の概要

サンプルとして、日本の伝統的建築として代表的な「桂離宮」において、日本的特徴の美しいとされる要素(縁側、庭園、床の間、茶室、路地等)を含んだものと、「桂離宮」には見られない、対極の美とされる、豪華な装飾を施した日本の伝統的建築として、日光東照宮陽名門や二条城の大広間等を加え10枚用意し、比較検討用として、西欧建築における美しいとされる要素(全面装飾、垂直性、天窓等)を含んだものを4枚用意し、計14枚で実験を行った。

それらを22尺度6段階のSD法で印象評価するものとした。被験者は20~30代の男性7名女性9名の計16名で、学生や一般の社会人である。なお被験者には、写真に写った建築空間において、自分がその場所に、実際に一人で存在していると仮定してもらって、評価を行った。

因子負荷量

実験結果と考察

日本建築と西洋建築において、「簡潔な-冗長な」や「派手な-地味な」それに「わびさびを感じる-わびさびを感じない」、「左右対称な-左右非対称な」などで評価の違いが見られた。これらは、一般に言われている日本建築と西欧建築の特徴的な違いと合致する結果が得られた。

次に各尺度の被験者平均値を用いて、主因子法、バリマックス回転にて因子分析行った。データ解析にはStat View Version5.0(Macintosh 版)を用いた。その結果、因子負荷量は(表-2)のようになった。
共通因子は8つ抽出され、第1因子には、「好きな」、「快適な」、「美しい」、「かわいらしい」、「楽しい」などの項目を含んでおり、『美しさ』と命名した。第2因子には、「派手な」、「静的な」、「簡潔な」、「明るい」などの項目を含んでおり、『安定』と命名した。更に第3因子には、「規則的な」、「左右対称な」、「まとまりのある」などが含まれており、『調和』と命名した。同じように第4因子には、「粋である」、「幽玄を感じる」、「わびさびを感じる」などが含まれており、『情趣』と命名した。また、第5因子には、「あいまい」、「暗示的な」、「繊細な」などが含まれており、『あいまい』と命名した。回転前の固有値1以上の共通因子は第5因子までであるが、第5因子までの累積寄与率は61.94%となり、これら5つの因子ではすべてを解釈することはできない。そして第6・第7・第8因子は、それぞれ1
つずつの尺度のみを含んでいるが、回転後には、因子寄与が1を越えていることを考えると、これら第6・第7・第8因子も特徴的な因子と考えられ、日本人の美意識の重要な概念であると考えられる。

実験の結論

今回のこの実験では、「あいまい」は「暗示」や「繊細」ともに一つの共通因子を抽出できた。このことは、「あいまい」が「暗示」や「繊細」と強い相関を持ち、美の概念として評価項目として機能した事を示しており、「あいまい」が美の概念であることを確認できた。
また「わびさび」や「幽玄」「いき」から、『あいまい』とは別の因子として『情趣』と命名した共通因子を抽出できた。この2つの因子は独立しており、「あいまい」と「わびさび」「幽玄」「いき」「暗示」「不規則性」「ほろびやすさ」の相関はほとんど見られなかった。このことは、一見2章に反するようであるが、「わびさび」「幽玄」等に「あいまい」の定義である「不明確・不明瞭」等が見出されたとしても、この他にもいろんな要因も含まれており、別々の概念として成立するものと考えられる

更に『あいまい』が因子として抽出されたことで、概念の階層構造においては、「わびさび」「幽玄」よりも上位に位置し、『あいまい』が「わびさび」等よりも、より広範な意味を有する概念であると言える。
 

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図1 被験者全員(35名) の評価構造図

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実験の結果と考察

評価項目の抽出、ラダーアップ、ラダーダウンによって抽出された被験者35 名全員の評価構造図を図1 に示す。これには被験者の言葉の内容が同じであると見なしうる言葉(評価項目)をまとめたものを含め、2名以上が使用した評価項目を挙げている。各評価項目の後の数字は、その評価項目を使用した被験者の数を示し、各評価項目を結ぶ線はラダーリングによって両評価項目を関連させたことを示し、線が太いほど両評価項目を関連付けた被験者が多かったことを示している。この評価構造図において、10 名以上が使用した評価項目だけをピックアップし、各被験者がその評価項目を使用したのか、あるいは使用しなかったのかを表に示したものが、表2 である。表の行(縦)には被験者の年代と性別、それに教育環境(建築系=建、非建築系=非)をとり、列(横)には、被験者が10 名以上使用した言葉を並べ、使用した人は■を付けている。これを見ると、『落ち着く(29)』『シンプルである(25)』は被験者35 名のうち、7割以上の人が使用した評価項目であり、多くの人に共通するであろう美的価値といえる。このことは、人の感性やセンスの違いによってバラツキが予想された空間に関する美的価値観に関して、多くの人に共通する美的価値が存在し、その美的価値が『落ち着く』『シンプルである』というものであることがわかった。

また図2は、表2の■ ( 使用した) を1、□ ( 使用してない) を0に置き換え、J M P v e r .5.0.1 によってクラスター分析を行い作成されたデンドログラムである。これを見ると、いくつかのクラスターで【年代】【性別】【教育環境( 建築系/非建築系)】等の属性による分類が見られるが、これら以外の要因によるクラスターも見られ、それらは評価を行う人間の社会的立場( 年齢・性別・職業等) の他に、意識的立場(普段から社会問題に関心が高い等) や行動的立場( 週に3回以上車に乗る等) 等によるものと考えられる12)。本研究では、ここに見られる【年代】【性別】【教育環境】等の属性による美的価値観の傾向や概要を把握しようとするものであるが、これらの属性は、デザイナーらが実空間を創造しようとした場合のユーザーニーズのカテゴライズとして、最も容易に予想できるものと考えられるためでもある。図3には、図2と同様に表2の■ ( 使用した) を1、□ ( 使用してない) を0に置き換え、J M P v e r .5.0.1 によって各評価項目を使用した有無と、年代別、性別、教育環境別との関係を表した対応分析図である。また表3には、各評価項目を使用した有無と年代別、性別、教育環境との関係を示す独立性のカイ2 乗検定のp 値を挙げている。表3を見てみると、p 値が0.05 より大きいもの( 例えば【年代】と「シンプルであるを使用した有無」) の2変数は独立であり、帰無仮説は棄却されない。すなわち、この2変数に関係がないことを示している。逆にp 値が0.05 以下のもの( 例えば【年代】と「落ち着くを使用した有無」) は、相関があることがわかる。 【年代】【性別】【教育環境】の各属性と、「各評価項目を使用した有無」との関係を見てみると、「落ち着くを使用した有無」と【年代】との相関があり、20~40代は「落ち着く」をインテリア空間における美的価値としているのがわかる。50代は逆に「落ち着く」を美的価値としていない。また「物が少ないを使用した有無」と「年代」の相関が見られる。図3より20 代と40 代が「物が少ない」をインテリア空間における美的価値としているが、30代と50代は「物が少ない」を美的価値としていない。これは年代が連続していないことを考えると、各年代別での相関はあるものの、年代層による違いではなく、むしろ【教育環境】との相関が見られることから、年代層による相関よりも【教育環境】による相関での解釈を採用するべきであると考えられる。次に「整理されているを使用した有無」と【年代】との相関が見られる。これも図3より20・30 代は「整理されている」をインテリア空間における美的価値としているが、40・50 代は「整理されている」を美的価値としていない。同じように「開放感がある」に関しても20・30 代はインテリア空間における美的価値としているが、40・50 代は美的価値としていない。【性別】に関しては、「各評価項目を使用した有無」との関係は見られなかった。【教育環境】に関しては先の「物が少ないを使用した有無」との相関が見られる。【建築系】は「物が少ない」をインテリア空間における美的価値としているが【非建築系】は美的価値としていない。その他の「各評価項目を使用した有無」と【年代】【性別】【教育環境】の各属性との相関は見られなかった。

まとめ

このような基礎的資料を蓄積し、今後の美的空間のデザインに活用する一つの具体例をここに示すと、まずデザイナーらが空間デザインを行う場合の初期の計画段階での活用・検討が想定される。
具体的検討の内容に関しては、例えば『落ち着く』の場合、図1 の評価構造図より、『落ち着く』に関する主な上位概念・下位概念の評価構造を抜き出し(図4参照)、それによりユーザーの美的価値(『落ち着く』) に関する、具体的な要求やそれによるベネフィットを読みとる。図4より『落ち着く』ための具体的な要因(『落ち着く』より右側の関連した項目) として『統一感がある』『整理されている』『シンプルである』『光の加減がいい』『光の入り方がきれい』『色合いがいい』等が挙げられる。これらから落ち着く空間を創造するためには、家具や置物が統一感を持って整理され、陽光が直接入るのではなく、障子やすりガラスを透過した柔らかな光が入り込む空間が落ち着ける空間であり、このような空間を美しい空間だと評価していることが読み取れる。また『落ち着く』と『リラックスする』『安定する』『居心地がよい』など精神的な安定を得ているのが解る。ただここで、図3、表3の結果より、『落ち着く』という美的価値は年代との相関があることが解ったので、その結果を考慮すると、20 ~ 40 代のユーザーが主に利用するような、例えば若者向けの商業施設等では『落ち着く』は重要な美的価値として、充分な検討を行う必要があるであろうが、逆に20~40代があまり利用しないような、例えば50 代以上をターゲットにしたシニア向けの商業施設やホテルなどでは、美的価値としての『落ち着く』は優先順位が低いものとしてデザインを進めることが可能となるであろう。このように主な8つの美的価値に関するそれぞれの上位概念・下位概念を抜き出した評価構造図と、それらをさらに具体的に説明補足を行うようなインテリア空間の写真や具体例を示した資料を今後まとめる予定であるが、このような資料を積み重ねることで、より多くの美しい空間が創出されるものと期待できる。

インテリア空間における美的価値観と評価構造

-現代日本人の建築空間における美意識に関する基礎的研究-

髙橋浩伸、大井尚行:日本建築学会環境系論文集 第615号、pp.59-64、2007年5月

研究の背景

建築家やデザイナーが美しい空間を創造しようとした場合、規範となるような論拠ある資料というものは見出しにくい。伝統的な考え方として、造形的な比例が絶対的唯一の美を生み出すという考え方があり、これは造形における長さの比例の関係さえ守れば、すべての人々がその造形を美しいと感じるというものである。この考え方の根拠の一つとなったものに、最も占いとされる建築書で、建築の歴史上有名な紀元前1 世紀頃のローマの建築家であるヴィトルヴィウスの『建築十書』があげられる。井上によれば、『建築十書』の中では建築美の毛要な要因としてシンメトリアが挙げられているが、このシンメトリアの簡単な比例がなぜ美を生ずるのかは説明されていないと述べている。

研究の目的

美しい建築空間を創造しようと考えた場合、一般に現在の建築設計のプロセスでいうと、クライアントがデザイナーや建築家に建築空間の創造デザインを委託し、デザイナーらはクライアントの意向を取り入れながらデザインを行う。この場合、美に関するセンスや美的価値観は、多くの場合デザイナーらのセンスや美的価値観に任されている。しかしデザイナーらの美的価値観とクライアントの美的価値観が大きく違うまま計画が進められると、竣工後、“ デザイナーの独りよがり” というような批判をクライアントから受けることとなる。このようなことを少なくするためには、デザイン・設計段階でのクライアントとデザイナーとのコミュニケーションが欠かせない。その場合クライアント個人の美的価値観を抽出する方法としては、ユーザーニーズを構造的に可視化することを目的とした「評価グリッド法」を用いた方法が考えられる。本研究では、ホテルや美術館等、多くのユーザーが使用する美的空間を創造する場合を考え、多くのユーザーのインテリア空間に対する美的価値観の傾向や概要を把握することを目的とする。ここで求めようとする空間に関する美的価値観は、ホテルや美術館等のように機能性や建設コストにも増して、美的価値観を優先するような場合を考えており、すべてのインテリア空間における美的価値観の傾向や概要を見出そうというものではない。

インテリア空間における美的価値観の実験
実験の概要(評価グリッド法)

本実験では、被験者の記憶における「美しい空間」のイメージを喚起させるため、エレメントとして写真を用い実験を行った。また空間に関して外部空間( 景観や建物の外部空間) と内部空間(インテリア空間) を区別し、インテリア空間に限定してエレメントを選定した。写真の選定には、出来るだけ偏向を避けるため、過去約20年(1984 ~)におけるインテリア・建築雑誌から、ホテルや商業施設等の美しいと思われる空間だけではなく、決して美しいと言えないような廃工場やものが溢れた煩雑な室内等のインテリア空間の写真を複写したものを115 枚選出し、この115 枚の写真を3名の被験者に分類してもらい、同一グループとした人数を類似度とし、その類似度行列をデータとし、クラスター分析を行った。その結果得られた15 のクラスターから、それぞれの中で特徴的かつ代表的と見なされるような写真を筆者が選出し、本調査で使用するエレメント(縦横:80mm × 60mm or 60mm × 80mm) とした( 写真1)。この場合、エレメントの写真が縦長であったり横長であったりするが、評価グリッド法におけるエレメントは、あくまでもトリガーであり、エレメント自体が評価対象でないため、評価項目の抽出には影響がないものと考えられる。被験者は20 代~ 50 代の男性20名、女性15名の計35名で行った。今回の評価グリッド法による実験は、エレメントを“ 美しい←→美しくない” の5段階に分類して貰い、“ 美しい” と判断した理由を聞き、その後ラダーリングを行うという通常の評価グリッド法の一連の手法で行った。

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神奈川県真鶴町における「美の原則」について

本報告において提案する「美のチェックリスト」は、評価グリッド法を用いて抽出した美的価値観を基に、インテリア空間における美しい空間創造のための、設計者支援となるものを創出することが目的であるが、このような美に関するチェックリストや美の基準と呼ばれるものに、都市景観における神奈川県真鶴町の「美の原則」が見いだせる。

神奈川県真鶴町のまちづくり条例第10条の「美の原則」は、8つの原則からなり、更に69 のキーワードを設けそれらを「美の基準」とし、建築物の高さが10メートル以上又は3階建て以上(地階を含む) のものあるいは、特殊建築物で2 階建て以上かつ敷地面積が300平方メートル以上のものに適用され、建設の際の基準とされている。表2には真鶴町の「美の原則」の構成表を示す。この「美の原則」は[場所、格付け、尺度、調和、材料、装飾と芸術、コミュニティ、眺め]の8つから構成され、これは『英国の未来像-建築に関する考察』の中の「10 の原則」を基に作成されたものである。またこの「美の原則」には、より細分化・具体化した形で、69 のキーワード(美の基準)による詳細なルールが示されている。このキーワードは、アレグザンダーの『パタン・ランゲージ-環境設計の手引き』の内容や手法を参考とし作成されたものである。この69のキーワード(美の基準)は8つの「美の原則」の下位概念として位置づけられており、各々のキーワードを[前提条件][解決法][課題]といった補足事項等の解説を行い、なるべくわかりやすい言葉やイラスト、写真等で具体的に説明するということで、より理解を深め、同じような価値観を共有しようとする努力が伺える。このようなキーワードの説明例を図1に示す。

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インテリア空間における「美のチェックリスト」の創出

表3には表1の美的価値観を基に作成した「美のチェックリスト」を示す。この「美のチェックリスト」では27 個の各評価項目(美的価値)をチェックの対象となるキーワードと位置づけ、縦軸にはチェック項目の重要度を示している。すなわち、被験者の過半数以上が使用した評価項目(美的価値)は、チェック項目としても最も重要視すべきものであり、多くの人々に共通するであろう美的価値であるので、重要度を第一水準とし、美的空間を創造する場合すべての空間で検討すべき項目と位置づけている。また被験者の約1/3の10名以上が使用したものを第二水準とし、クライアントの意向やソフト的な戦略あるいは予測されるユーザーの属性やニーズ等を考慮しながら検討すべき項目と位置づけている。更に被験者35名中5名以上が使用したものは、第三水準とし、デザイナーらの独自な判断によってクライアントやユーザーの属性等を考慮しながら検討すべき項目と位置づけしている。表3における各キーワードは、表1でも解るように、美しいと評価した直接の理由やその場合被験者のベネフィット、あるいは具体的内容であったりと様々であり、チェックを行う場合に検討内容が解りづらい場合が考えられるため、各キーワードごとに具体的なチェックの内容や、キーワードの説明・補足を行っている。これは、図1の真鶴町における「美の基準」のキーワード説明例に見られるような、抽象的な言葉に対する補足説明をすることで、より統一された解釈が為されることを目的としたものである。具体的には、評価グリッド法の聞き取り調査の際聞かれた、各評価項目の上位概念や下位概念を用いて、そのキーワードの説明を行い、考慮・検討すべき具体的内容を示すなどしている。ここでこのキーワードとした評価項目とその上位概念・下位概念とのつがりをなす階層的構造は、他の評価項目と重複した部分も多く、このため表3のキーワードの説明・補足に関しても重複するような部分も見られるが、キーワードの理解を深め、より共通した理解が得られるよう重複して記載した。また、このキーワードは、表1におけて使用した被験者の数の多いものから順に抽出したもので、抽象的な上位評価項目や具体的な下位評価項目が混在している。このような抽象的項目は、多様な解釈が可能でありキーワードとして適当ではないかもしれないが、評価グリッド法における評価項目自体は、被験者自身の言葉による評価であり、更にこれらの抽象的評価項目は、多くの被験者に共通する美的価値観であるため、具体的な説明や補足を行うことで、共通した認識が得られるように工夫し、キーワードとした。更に各キーワードと属性(【年代】【性別】【教育環境(建築系・非建築系)】) との関連を示し、計画空間のユーザー等の属性の予測等によって、検討項目を考慮するべき点を挙げている。次に図2には、各キーワード(27 個) ごとにそのキーワードの示す具体的な写真等の例を載せ、また既報1) の評価構造図から抽出したキーワードを中心とした評価構造を抽出し、そのキーワードの上位・下位概念を示すことで、より理解を深められるような補足資料として、各キーワードごとにNo. 1~ No.27 まで27 枚作成している。これも、キーワードに対する細かな補足説明をすることで、より統一された解釈が為されることを目的としたものである。なおこの補足資料は、神奈川県真鶴町の「美の条例におけるデザインコード5)」(図1参照)の形式や説明例等を参考に作成したものである。

建築設計プロセスへの適用

本研究における「美のチェックリスト」は、行政や第三者的立場に立てる機関がチェックを行うものを想定し、建築確認申請が提出される前の事前協議の段階で、設計者やデザイナーと建築主、それに検査機関の三者が協議・検討・確認を行うものとして作成したものである。この「美のチェックリスト」は、一般に建築設計の実務的なプロセスにおいて、〈調査・企画段階〉から〈基本設計〉の段階において、設計者やデザイナーと建築主によって事前協議・検討確認されることが望まれる。更に〈実施設計〉の段階においても、デザイナーは、常にこれらのチェック項目を念頭に設計を行い、確認申請提出時には、これらの項目のチェック・確認を行い、設計に反映させたことを報告し、第三者機関の承認を得ることが望ましい。このような方法は、神奈川県真鶴町の美の条例における都市計画の手法に倣ったものであるが、真鶴町の美の条例同様、法的な強制力は持たないが、積極的な指導・監督が望まれる。このような検討・確認を行い、クライアントやデザイナーらが美しい空間に関しての意識をより高め合い、更にデザイナーらの美的センスとが相乗効果を成すことで、より多くの美しい空間の創造が行われると期待できる。またこの「美のチェックリスト」は、規模に関係なく、例えば多数のユーザー等が利用し、美的空間としての要求の強い美術館やホテル、展示スペース等のインテリア空間の創造に関して使用されることを想定したもので、これらの美的空間の創造に関しては、設計者支援の基礎的資料して活用し、より多くのユーザーの賛同を得られるような美的な空間が創造されることが望まれる。

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あとがき

このようなデザインコードとしての「美のチェックリスト」を創出したのは、近年見られる、美の対局としての「醜」さえも「美」であるという主張など、「美」の概念の混沌を整理しようとするものである。この美のチェックリストは、決して美しいと言えないような空間を少しでも減らしていこうとするもので、デザイナーや建築主に対して、デザインの自由や個性的なセンスを潰そうとするものではない。むしろ美しいデザインや、感動を呼ぶ美的センスを後押しするためのものであり、行政的な強制力を行使するようなものや、ファシズム的なものではない。このチェックリストをデザインの段階で協議・検討することで美に関しての意識を喚起し、建築家やデザイナー本来の目的であったであろう、美しい空間づくりに関しての、根拠ある基礎的資料として活用して貰うためのものと考えている。又、この「美のチェックリスト」は、既報1)による35 名の調査結果を基に作成したもので、今後の研究の蓄積により追加・修正される可能性も考えられるが、このような資料を基礎資料とし、設計者・デザイナーの知識や経験それに新たなセンスや創造性を注ぎ込むことで、多くの人々に賞賛されるようなインテリア空間の創造に、寄与できるものと確信している。

インテリア空間における美のチェックリストの創出

髙橋浩伸、大井尚行:日本建築学会技術報告集 第13 巻No.26、pp.613-616、2007年12月

研究の背景

設計者やデザイナーらが美的空間を創造しようとした場合、規範とできるような論拠ある資料と言えるものは少ない。伝統的な考え方として、造形的な比例の関係が重用された時代が長く続いたが、現在ではこの比例の関係が絶対的な美を生み出すという考え方は、否定されているものもある。既報における美的価値の抽出は、認知心理学的手法としての評価グリッド法を用いた結果であり、このような心理学的手法を用いた実験結果は、「記述的な科学」の範疇とされ、美的価値観に関する論拠あるものと言える。このような論拠ある美的価値観を抽出できたことで、これらを基に、インテリア空間に関する「美のチェックリスト」の創出を行うことを本報の目的とする。この「美のチェックリスト」は、デザイナーが美しい空間を創造しようとした場合の、基礎的資料として活用することを想定して作成するものである。

インテリア空間における美的価値観の概要と傾向

既報において、インテリア空間に関する人々の美的価値観には共通する美的価値が存在し、また【年代】や【教育環境( 建築系・非建築系)】等による美的価値観の評価の違いが見られた。具体的には、『落ち着く』『シンプルである』『空間が広い』が被験者の過半数以上が挙げた美的価値として抽出され、多くの人々に共通するであろう美的価値と考えられる。またこれらの美的価値と、これら以外で複数の被験者が挙げた美的価値とを含め、【年代】や【教育環境( 建築系・非建築系)】との関係を見てみると、『落ち着く』に関しては、20 ~ 40 歳代で美的価値としているが、50 歳代は美的価値としていない。また『整理されている』と『開放感がある』は、20~30歳代で美的価値としているが、40~50 歳代では美的価値としていない。更に『物が少ない』に関しては、教育環境が【建築系】は美的価値としているが、【非建築系】は美的価値としていないことが確認された。

 

次に表1には、既報の評価グリッド法にて抽出された評価項目の中で、被験者35名のうち、5 名以上が挙げた評価項目を挙げている。ここで抽出された評価項目は、「美しい」という評価基準のもと抽出された「美しいと評価した理由」やその具体的な要因であり、すなわち美的価値と言える。表1の縦列の並びは、使用した人数が多い順に上から並べてあり、その中でも過半数(18名) 以上、10名以上、5名以上が挙げた評価項目に分類してある。一番上段の過半数(18名) 以上が使用した評価項目は、この後作成するデザインコードにおいて最優先で検討すべき項目と言える。次ぎに10名以上が挙げた評価項目、更に5名以上が挙げた評価項目の順で重要度が低くなると考えられる。横軸には、評価グリッド法におけるラダーリングにおいて抽出された評価項目の階層性を示し、中央にオリジナル評価項目( 美しいと判断した理由) を示し、左に上位の評価項目( 美しいと評価した被験者のベネフィット)、右に下位の評価項目( 美しいと評価した具体的内容) を載せ、評価構造図の構造と合わせている。

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