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Mokkei Architect & Associates
since 1992-2013
MOKKEI(木鶏)
荘子・外編
紀渻子という者が、闘鶏の好きな王 (学説にもよるが、一般に周の宣王)のために軍鶏を養って調教訓練しておりました。
そして十日ほど経った頃、王が
“もうよいか” と聞きましたところ、
紀渻子は “いや、まだいけません、空威張りして「俺が俺が・・・」というところがあります” と答えました。
さらに十日経って、又王が聞きました。
紀渻子は、 “未だだめです。相手の姿を見たり声を聞いたりすると昂奮するところがあります” と答えました。
また十日経って王が聞きました。
紀渻子は、“未だいけません。相手を見ると睨みつけて、圧倒しようとするところがあります” と答えました。
こうして更にに十日経って、また聞きました。
そうすると初めて “まあ、どうにかよろしいでしょう。他の鶏の声がしても少しも 平生と変わるところがありません。その姿はまるで木彫の鶏のようです。全く徳が充実しました。もうどんな鶏を連れてきても、これに応戦するものがなく、姿を見ただけで逃げてしまうでしょう“と言いました。
木鶏デザイン
MOKKEI Design
since 2014

主 宰 : 髙橋 浩伸
一級建築士
熊本県立大学
理 念
【Design philosophy(MOKKEI Design)】
木鶏デザイン(業務内容)
MOKKEI Design
建築 基本設計+デザイン監修
デザイン_ブランディング
建築コンサルタント:コンストラクション・マネジメント(CM)
デザインの目的は、誰かを「幸福」にすることと考えます。
【未来】
私たちは紛れもなく「今」を生きています。「未来」とは、まだ訪れていない「今」だと言えます。ただ「未来」は、「今」ではありません。「未来」は、「今」と違う世界になるはずです。もし10 年後、世界が今と全く変わっていなければ、それは未来ではなく、未来は10 年以上先にならないとやってこないことになります。「未来」は必ず「今」とは違います。「未来」は「今」の世界がもとになっていいます。「今」の我々が、どう考え、どう行動するかで「未来」は決まります。私たちは、建築デザインの力を信じています。明るい、豊かな、幸福で充実した時間を過ごせる「未来」を創造したいと考えています。
【建築】
「建築」とは、建築物(建物)をつくる人間の行為、あるいはその行為によってつくり出された建築物を指します。
「建築」は、少なからず地球を改変し、傷つけてしまいます。この現実を直視し理解すれば、建築の見え方・考え方が違ってきます。
すなわち
「この建築は(地球を傷つけてまで)必要なのか?」
「この建築で誰かを幸福にできるのか?(誰かを不幸にしていないか?)」
この二つの問いを常に自問自答する必要があります。
【創造】
一般的に「創造」は、既存の古いものを壊し、最新の技術や材料でつくり出されるものと理解されているかもしれません。しかし、ここで言う「創造」は、10年や20年で廃棄されるようなデザインの建築ではなく、一人の人間が体験し得る年月としての100年を見越したデザインによってSDGs(持続可能な開発目標)を適えるものでなくてはならないと考えます。
「ブランディング」_辞書によれば「その特徴や競合する企業・製品との違いを明確に提示することで、顧客や消費者の関心を高め、購買を促進することを目的とすること」とあります。昨今、〈ブランディングデザイン〉という言葉をよく耳にします。
ここで提案するのは「デザイン_ブランディング」
建設会社様や工務店様の建設する住宅等の建物の「デザイン」を「ブランディング」します。もっと具体的に言えば「造り手の歴史や強み、考え方を反映した特徴的デザインを創出し、競合する他社との違いを明確に提示することで、顧客や消費者の関心を高め、購買を促進することを目的とします」
我が国の建築士制度は、いわゆる工学としてのとしてのエンジニアリングにシフトしており、建築士(一級・二級)の免許・資格にデザイン性を問うものはありません。しかし、昨今のグッドデザイン賞などでは、デザイン監修者が主役となり、受賞を競うといたった現象が起きており、「デザイン監修」の重要性が増しています。
ここで提案する「デザイン監修」は、単なる機能性を帯びた箱としての建築ではなく、昨今の環境共生的意識の高まりや、時代や文化の継承、場所性の重視、持続可能な社会の実現など、建築における「理念」や「デザインコンセプト」を確立し、プロジェクトを通じ広く高い視点で、デザインの目的である「誰かを幸福にするため」の実空間の創造に貢献することを指します。
具体的には「理念・デザインコンセプトの策定」「建築計画に関する企画・調査」「基本設計図の制作」「詳細デザインの検討」「コスト監修(見積チェック)」「現場デザイン監修」などを行います。
コンストラクション・マネジメント(CM)とは、建築プロジェクトを成功に導くため、専門性の高いコンストラクション・マネジャー(CMr)が技術的な中立性を保ちつつ、発注者の立場に立ってそのプロジェクトのマネジメントを行うことを言います。
〈CMの業務内容〉
1.企画フェーズ
-
事業方針や全体工程、事業予算はじめ、発注方式の検討、社内外向け説明資料の整備など事業計画を策定していきます。
2.設計者選定フェーズ
-
設計者選定方法の提示、参加者の募集、評価方法の立案、評価、設計業者との契約内容の確認などをコンストラクション・マネジャー(CMr)がサポートします。
3.設計フェーズ
-
設計者から提示された見積書を細部まで確認し、必要であればコストダウンや設計改善を提案し、設計コストの管理を行います。
4.施工者選定フェーズ
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発注方式を検討・提案し、見積書の内容を確認、価格交渉、工事請負契約内容の確認など、ゼネコンの選定や発注のマネジメントを行います。
5.工事フェーズ
-
工事の進捗状況を確認し、追加工事が発生した場合の見積内容の確認、竣工検査への立会いを行っていきます。
-
The purpose of "Design" is to make someone happy
(「デザイン」の目的は誰かを幸せにすることである)
-
Design without philosophy can't make people happy
(理念の無いデザインでは、人を幸せにできない)
-
Perfect design can't add anything, can't subtract anything
(完璧なデザインは何も足すことも引くこともできない)
作品
Gallery まつだ 基本設計(2015.03)
髙橋 浩伸 (熊本県立大学)
・2022年度「グッドデザイン・ベスト100」受賞
・土木学会デザイン賞2022 優秀賞 受賞
「つどい処 まつだ(Gallery まつだ)基本設計」を含む熊本県天草市
【﨑津・今富の文化的景観整備】に関する景観づくり






設計主旨
海と山に囲まれた狭隘な土地に形成された密集型漁村集落の天草﨑津集落。そのランドマーク的な﨑津教会の正面に位置する道路沿いに「Gallery 﨑津(つどい処まつだ:旧松田邸)」は建設された。この旧松田邸は所有権が市に移譲された空き家となっていた。
キリスト教関連文化遺産として世界遺産登録を目指すこの﨑津集落において、空き家問題は深刻であり、このような空き家を活用し、世界遺産登録後の観光客増加に対する施設が計画され、市民ギャラリー+休憩所としての整備が考えられていた。当初は改修案が検討されたものの、2016 年4 月の熊本地震によって、耐震性・耐久性などに不安があるため、天草市は改築を決定した。
世界遺産を目指す地域に限らず、今日の建築・空間創造を考えた場合、人々の記憶や歴史を繋ぐ空間づくりが必要であろう。普遍性・国際性を謳った近代建築と同じ轍を踏まぬよう、地域性や場所性の重要度が増している。そこで、この計画に当たり計画地の面する道路沿いの街並み景観に影響の大きいとされる建物外観の色と建物の規模を調査した。この周辺は、景観形成基準を制定しているが、それ条例制定以前の建て替えなどにより、現代的で無表情な街並みへと変貌しつつあることが明らかにされた。
改修工事は、構造的な耐震性や経済的な耐久性を考慮しながら、極力既存の家屋の形や色を残しながら、人々の記憶や歴史を繋ぐ空間づくりが比較的容易に実現できるが、既存家屋を解体除去し、すべてをリセットした上で新たな空間を創造する改築工事となると、人々の記憶や歴史を塗り替えかえる可能性が大きくなり、地域性や場所性の無い空間が創造される危険性がある。そこで、今回の改築案に関してのテーマは、人々の記憶や歴史を繋ぐ空間づくりを行うための「埋没されたデザイン」とした。潜伏キリシタンの歴史や密集型漁村集落としての周辺の景観や環境、また更に人々の記憶の中に埋没し、決して現代的多様な主張を行わないデザインとし、それを実現するためのデザインコンセプトを、1.「景観の継承」、2.「記憶の継承」、3.「歴史・文化の継承」、4.「コミュニティの形成」とした。
建物外観は、既存建物と同様の中2 階(厨子2階)の虫籠窓の町屋型式を継承し、「景観の継承」と「記憶の継承」を実現している。この中2 階を吹抜けとしたギャラリーは、﨑津教会のゴシック様式の垂直性を暗示し、この計画地で唯一﨑津教会天主堂上の十字架が見える場所に椅子が置かれるなど、潜伏キリシタンの歴史を持つこの地域の「記憶の継承」と「歴史・文化の継承」を演出している。
また、この地域の特徴的景観形成要因としてとして「トウヤ※1」と「カケ※ 2」がある。ギャラリーの展示空間の列柱は、この「トウヤ」の界隈性や狭隘性を表現したもので、人々の「記憶の継承」と「歴史・文化の継承」を暗示させる。ギャラリー内には、この計画地の中で唯一﨑津教会天主堂上の十字架が見える場所に椅子が置かれ、床タイルの十字を暗示させる色区分と合わせて、隠れキリシタンの歴史を持つこの地域の「歴史・文化の継承」を演出している。またこの床タイルの色分けは、展示方法のバリエーションに応じ、観覧者の位置確認と出入り口の方向を示すという機能性も備える。
前面道路に面する西側部分には、ギャラリーへの客の誘導を兼ねた休憩スペースを設け、世界遺産登録と同時に増加が期待される観光客の「コミュニティの形成」の場を創造している。密集型漁村集落のため、周辺の街並みでは、このような軒下空間のオープンスペースは見られないが、公共的施設として人が集まる場を創造したいと考え、このようなオープンスペースを確保した。ただし周辺の景観に考慮し、軒先を周辺建物に合わすと同時に、休憩スペースの目隠しの役割を担った柱を@455mm で連続して建てることで、壁面として周辺街並みの壁面とも揃えるなどの配慮を行っている。
建物東側には、「海」を暗示させる割栗石を敷き詰め天満船を配置した部分と「山」を暗示させる植栽を施した築山を計画していたが、南側隣地の空き地を市が今後整備することが決定し、その空き地との繋がりを考慮するためこの計画は一旦保留し、今後の空き地の利用計画にて再検討することとなっている。
ありあけ幼稚園 増築(長崎県島原市)2021.03
髙橋 浩伸 (熊本県立大学)
『園長先生。 ここに ” おもちゃ箱 ” みたいな空間を創りましょう』
『ハイッ! いいと思います』
こんな会話から、この空間は生まれました!!




石倉活用 基本設計(unbuild)
髙橋 浩伸 (熊本県立大学)
+ 道脇 力(MICHIWAKI DESIGN OFFICE(代表))
※ 石倉再生計画の動画をアップしました
https://youtu.be/ct7TIc3cNN0













設計主旨
【相良村の地域性】
計画地の相良村は熊本県の南部、球磨郡のほぼ中央に位置し、豊かな自然に恵まれ古い歴史と伝統が息づく農山村である。村の中央には日本三大急流の一つ球磨川最大の支流で、日本一の清流とうたわれる川辺川が貫流し、中流域から下流域にかけ平野が拓け、水田や畑が広がる典型的な農業地帯となっている。
相良村は、2017年フランスのサンバランタン村と姉妹都市提携を行い、「愛」をテーマに地域振興に取り組んでおり「相良」をもじり、「相性の良くなる村」として、毎年バレンタインに関連したイベント等を行っている。観光資源として宿泊・温泉等を備えたリゾート施設ふれあいリフレ茶湯里や、国の重要文化財に指定された十島菅原神社をはじめ雨宮神社などの歴史的建造物なども多く残されている。周辺の多良木町や山江村には現在でも石倉が点在しており、かつて石の文化が形成されていたであろうことが容易に想像できる。
国の登録有形文化財に指定されている球磨地域協同組合第26号倉庫(山江村)は、山田大王神社裏の大王谷石切り場から切り出され、石質は加工しやすい加久藤溶結凝灰岩が使用された記録が残る。本計画における石倉も、採石場は不明ながら同様の石材が使用された可能性が高い。
【地域性の継承】
相良村柳瀬地区石倉は、建設(1946年)から70年以上が経過しているが、2016年の熊本地震の影響も見られず、建設当初の風格ある姿を残している。石積の石材は、周辺地域同様、加久藤溶結凝灰岩が用いられていると考えられ、この地域に残る石の文化を継承する貴重な建物である。建設当初は、農業協同組合(現JA)所有の米の備蓄庫として利用されていたが、所有権が相良村に移転し、村の観光資源に活用しようと検討が進んでいた。
この石倉の平面形状は短辺9,100mm、長辺25,480mmの長方形で、尺貫法のモジュールが採用されている。内部は中央で2室に区画され、各1か所ずつの出入り口を持つ。内部には、約1間おきに木柱が配され、小屋組みは洋小屋とし、約9mの梁間スパンを確保している。米俵を備蓄積載する際、石積との間に通風換気の役割を果たす「荷摺り」の木材が現在も残っている。
調査の結果、小屋組は、木柱頭の横架材(桁)にのみ積載し、石積みには過重負担されていないことが判った。すなわち、この場合の石積は構造部材ではなく、構造的負担の無い内外壁材と言える。
石倉は、室内環境の安定性が重要であり閉鎖性が高く、我々人間にとっての居住性を高める快適性や開放性、内外の関係性といった要因を確保するのが難しい。
一般的に、このような古い建築の石倉を商業施設で再利用しようとする場合、現行法に照らし合わせると、耐震性の問題等で現状維持の模様替えや修繕といった手法が多くを占めている。もちろん歴史を経た古い建築はそれだけで魅力的であるが、これらの手法の多くは、古い建築を懐古的に、表層的に操作するのみで、真に未来的、創造的とは言えまい。
本計画は、人口減少の続く過疎地域における村民憩いの場と村内に点在する観光資源のネットワーク化を目指した観光拠点となる施設建設を目指した。ワークショップ等により、メディアスクエアと名付けられた雑誌や図書を常備する情報ステーション+子育て支援スペースを併せ持つ施設を整備(新築棟)し、石倉の活用として、地域の集会や会議、文化的展示のできるギャラリーなどに活用できる多目的室、物産コーナー、チャレンジショップといった地域振興の拠点的施設が組み込まれた。
計画地の東側には、村道と田んぼを隔て川辺川が望め、大局的・将来的展望として川辺川への親水性や計画地拡大も検討された。しかし、現状の村の財源等を考えると、まず石倉再生を基本とした施設整備を優先し、敷地買収済みのうち、石倉周辺の施設整備が計画された。
石倉の石積みは、調査の結果小屋組みの荷重を負担しておらず、内部の木軸組によって形成されているため、本計画では、外部の囲いとしての石積みはそのまま残し、内部の木軸組及び小屋組を改築することとした。このことで、石倉における改修工事(木部改築)が現行法的には抵触しない。しかし耐震性が確保されたということでもなく、公共施設としての最低限の安全確保のため、内部木軸組には、@910mmの耐震壁を配し、改築する木軸組の耐震壁とすると同時に、地震時における石積み壁の内部倒壊防止用の耐震壁とした。この耐震壁は、内部空間において、この石倉の歴史性の継承のため極力視界を遮ることの無いよう、石積みを直接見られるよう金属ブレースの筋交いのみで面を造らず、透過性を高めている。また小屋組みは、既存石倉の軒高の高さを利用し、天井桟敷的空間を創造するため、登り梁形式を採用した。ただしこの形式は鉛直荷重に対して柱頭部分で外側へのスラスト力が働くため、登り梁にタイバーを設置しすると同時に、梁の両側には耐震壁を設置している。この耐震壁は、先述の石積み壁の内部倒壊防止用の耐震壁を兼ねており、本計画における特徴的な意匠的・実用的軸組となった。
また、今回の登り梁形式においては、意匠的観点から水平合成を確保するための小屋組みにおける火打ち梁を嫌い、屋根面における構造用合板で水平構面を固め、剛性を確保している。
建築コンペ
第7回 医美同源デザインアワード
髙橋 浩伸 (熊本県立大学)
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「壺中天」の意味は、安岡正篤氏の六中観(忙中閑あり。苦中楽あり。死中活あり。壷中天あり。意中人あり。腹中書あり)の一つ「壺中天あり」に由来します。「壺中」とは別天地という意味で、人生の過程において、時には別天地で楽しむ時間も必要であるという意味を含み、まさに「医」に身を委ねなければをならない人々の心の拠り所となり、希望の明日へと導くような空間をイメージしています。
病み、傷つき、癒しが必要な人々の心と体を回復させる医療を行う「病院」という施設は、いわゆる医療を機能的・効率的に行うための空間でした。ただ近年大規模な病院等では、簡易的な商業施設や娯楽施設的空間が併設されたものも見受けられますが、人生を見直したり、人生の岐路に立つような体験をした者(患者)にとっては、これまでの「病院」は、決して「幸福な時間」を過ごせる空間ではなかったと考えます。
2016年の熊本地震は、最大震度7が2回観測された未曾有の大地震として、人々の記憶に刻まれました。私自身、被災者でもありましたが、地震発生後に放映されたあるテレビ番組にくぎ付けになりました。それは被災地の役場女性職員が、業務として遺体の搬送や避難所の運営に忙殺されながら日々を過ごしているというドキュメント番組でした。彼女はある日、医療サポートとして派遣されてきたケアチームの扉をたたき、医療スタッフにその心の内の葛藤や無力感をさらけ出し、一気にあふれ出す涙を止められない姿が映し出されていました。この女性職員は、自分自身も被災者でありながら、震災から約1か月間、ほとんど自分の身の回りのことは後回しにし、町役場へ訪れる被災者の対応に追われ、疲れ果て、いつ倒れてもおかしくない状況でした。しかしこの後、数週間経った頃、この女性職員に小さな変化が見られるようになりました。それが、ほんのりと彩られた唇の紅でした。大人の女性として日常、何の違和感もない「紅をさす」という行為が、一瞬で地獄絵図と化したふるさとの風景や止まった時間の中で、本人にとっても周りの人々にとっても大きな変化をもたらしました。私には、この「紅をさす」という彼女の美意識が、絶望に打ちひしがれていた彼女の心を未来へとつなぎ、確固たる負けない意志を表明したように見えたのです。テレビに映し出された女性職員のほのかな紅は、私にとって震災時や非常事態においても、美意識の重要性を確信させてくれた出来事でもあったのです。私はその時、あらためて人間としての生活を確立し、人としての心を保つためには、やはり「美」は必要だと強く思えた瞬間でした。
ここに提案する「空間」は、人間の人生にとって欠かすことのできない「美=芸術(創作)」を再認識する場であり、病み傷ついた心と体を癒し、明日への希望を見い出すような時間を過ごせる空間です。「工房」では、絵画や書道を創作し、「ギャラリー」では、創造された作品を鑑賞したり、周りの自然の中で四季の移ろいを感じたりし、「壺中天」では、まさに壺中に天があることを実感できる空間となっています。ある意味贅沢な空間ですが、「医美同源」を叶える空間と言える空間デザインであると考えます。
TINY HOUSE DESIGN CONTEST 2021
髙橋 浩伸 (熊本県立大学)
新型コロナウイルス禍に生み出された「新しい生活様式」は、苦肉の策であることは理解できるが、総毛立つ気色の悪さは拭えない。ソーシャルディスタンスや三密回避といったキーワードに、明るい未来は決して描けない。人間は近接の動物だ。
視覚、聴覚、触覚、味覚、嗅覚の五感を通し、人は人を感じ、人を見抜き、人を信じ、共に触れ合い暮らしてきた。我々は新型コロナウイルス感染症対策として、一時的に触覚や味覚、嗅覚に制限をかけたが、人々の持つ違和感や嫌悪感は、近接の動物である証であろう。人は決して独りでは生きていけない。
このような理由から「2021年のタイニーハウス」は、根本的意味が揺さぶられた。これまでの「集(社会)」から距離を取り「個(孤)」を楽しむといった意味合いから、「集」での生活を拠り所とした「個」の確立を目指す人間本来の生き方を問う、新たな住空間の在り方の提案である。


ここでの「集」と「個」の関係性は、一見すると戦前まで見られた、長屋や団地での関係性と似ているように見えるが、過去、これほど「個」の多様性を認め、その重要性が主張された時代はない。かつては、「集」で生きることこそ、生命維持を約束するものであった。しかし技術革新等によって、「個」での生命維持が可能となり、「個」は、多様性やオリジナリティを主張し、「集」を十字架や足かせと見做すようになった。だが新型コロナウイルス感染症によって、浮かび上がってきたものは、どれほど技術革新が進もうと、人は決して独りでは生きていけないという現実だった。人間はロボットや機械ではない。単にエネルギー補給のためだけの食事では、人は心を病んで、人間らしい生活を送れない。すなわち生命維持が危うくなるのだ。仲間や家族と楽しい会話をしながらでないと意味をなさない。現代に生きる我々は、この技術革新におぼれ、人間本来の生き方を見失い、礼儀やモラル、思想や哲学を疎んじ、効率のみを求めてきた。その象徴がまさに今日の「タイニーハウス」と言える。
ここに提案する「私のタイニーハウス」は「私たちのタイニーハウス」と言い換えられる。この提案は、「集(社会=村民)」に軸足を置いた、シンプルで小規模なミニマリズム的「個(孤)」の空間の確立であり、新たな住空間のフェーズを示すものと言える。
小菅村の「村の木」として村内一円に広く植林されているヒノキ材を用いて、一辺2.4mの立方体グリッドで形成された構造体に、ミニマムな「個」の空間(タイニーハウス)を創出した。ただこれは、単なる「個」の極小住空間の提案ではなく、「共に生きる」ことを大前提とし、今日でいうシェアハウス的形態を取りつつ、隣接する別棟には、職住一体とも言える「工房(Lab)」を持つ。すなわち、「個」の確立には、生業をたて、社会(集:村民)との接点の中で、生活を継続する必要がある。その依り代が、ここで提案する「タイニーハウス+工房(Lab)」だ。ここで想定される住人は、モノづくりや芸術・文化に関する興味を持ち、小菅村での21世紀における「人間としての生き方」を実践し、情報発信する者とし、「アーティスト・イン・レジデンス」的機能も持つ。「タイニーハウス」の本質は、引き籠る空間ではなく、シンプルに人間らしく、共に生きる空間である。
第17 回 インテリアデザインコンペ2020
髙橋 浩伸 (熊本県立大学)
第17 回 インテリアデザインコンペ2020 入選作品
新型コロナウイルス感染症の影響で、訪日外国人観光客は激減し、国内における県外への移動も憚られる昨今だが、ここ1 ~ 2 年以内には、必ずやコロナ禍を脱却できるものと信じている。人間の歴史を振り返ると、我々人類は明らかに「近接の動物」であり、このままソーシャルディスタンスを保ったままの新たな生活様式を続けていたら、文化や芸術、人間関係や社会などは崩壊し、真の人間らしさを見失ってしまう。
そこで、2025 年開催予定の大阪万博における人とつながるゲストハウスに対して、日本の底力を示す日本美の空間を提案したい。
我が国における「インテリア」の初出は、平安時代の貴族の住宅様式としての「寝殿造り」とされ、基本的に間仕切りの無い空間で、障屏具によって空間を区画し、調度を配した。やがて室町時代の貴族の住宅「書院造り」になると、調度や障屏具などのインテリアは建築化され、障子や襖、付け書院や違い棚など、建築と一体化していく。


ここで提案する空間は、日本美の空間を代表する龍安寺石庭をモチーフに、砂利敷きに15 個の石になぞらえたキャンドルを配した「石庭」、その両側には個(独り)の時間を楽しめる「方丈」を配した。
入口から中央の「廊」正面には、着物の帯を掛け軸に見立て、お出迎えの空間としている。「廊」の左右には複数の客をもてなすための集(繋がり)の空間としての「座敷」と、軽食や飲み物を配した「厨( くりや)」がある。
「廊」「座敷」「厨」「石庭」「方丈」の空間は、〈すだれ〉によって柔らかく、しかも確かに区画され、拡がりと開放感を持ちつつ、落ち着いた空間を演出し、日本美の醍醐味を感じさせる空間を創造している。
この作品タイトルの【きよら】とは、平安時代における最上級の美を表現する言葉であった。
Love Bench Design Competition 2019(2019.07)
髙橋 浩伸 (熊本県立大学)
ラブベンチ デザインコンペ 2019
「お父さん座ろうよ!!」
このラブベンチは、菊池公園城山展望所から一望できる菊池市の今を切り取る額縁となっている。ベンチは、ハートのオブジェが造りこまれた「額縁」部と、格子状のスクリーンによって囲まれた『ベンチ』部からなる。ベンチに人が座っていなくても、眼下に広がる菊池市の風景を切り取る額縁として、来訪者の心を癒す。また更に、カップルが座ることで、このラブベンチは完結し、菊池の自然豊かな風景とカップルの後姿がまるで映画のワンシーンのように時間を切り取り、幸福な絵画を完成させる 高齢化の進む地方都市の菊池市を一望できるこのラブベンチには、若いカップルというよりも、普段は手もつながなくなったカップルに座ってほしい。
決して若くない者にとって、カップルで座るのは、気恥ずかしく、他人にはあまり見られたくないものである。そのためこのラブベンチは額縁に奥行きを持たせ、額縁の側面を格子状にし、見え隠れの効果を演出し、カップルの羞恥心を減らし安心感・包まれ感を増幅させている。
このラブベンチは「おしどり夫婦の里」「妻を大切にするまち」をうたう菊池市民の男性たちにとって、まさに試金石の場であり、女性から「お父さん(パパ、あなた)、座ろうよ」と言われたら断れない聖地であり、男性は必ず、日頃の感謝を「言葉にする」神聖な愛の空間となってほしい。

Love Bench Design Competition 2018(2018.06)
髙橋 浩伸 (熊本県立大学)
ラブベンチ デザインコンペ 2018
「桜と菊」
最初に菊池公園を訪れたのは、3月末。
園内の城山展望所も例年より早い、満開の桜に覆われていた。「桜」の花びらは、よく見るとハートのかたちをしている。桜を見ると幸せな気分になる所以であろう。日本の国花は「桜」と「菊」であり、まさにこの菊池の地にふさわしい。ラブベンチの平面形状は、「菊」の形からインスピレーションを受け、直径φ1.2メートルの扇型としている。この形態は、着座時に自然と二人がやや向かい合うかたちとなり、膝が触れ合う角度となっており、また背もたれに囲い込まれた安心感が、二人の距離感に心地よさを演出している。
このベンチへのアプローチは、北側に接続された既設園路から行うが、北東に位置する記念碑の同心円状に“飛石”を配置した。それに誘われて奥へと歩を進めるとハート形の飛石に辿り着く。行き止まりの“ハートの飛石”で振り返ると、ベンチの縦のスリットにハートの形が浮かびあがる。(上部パース参照)このハートは、“ラブベンチの方位軸”でしか見出すことができず、このベンチがラブベンチたる所以の一つである。
(北側園路からではわからない:立面参照)
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“ラブベンチの方位軸”は、北から反時計回りに110度の角度に位置し、遠くに雲仙普賢岳を望み、冬至の日没方位とほぼ重なる。ベンチはこの方位軸を線対称とした、およそ240度の扇型をしている。基礎部はコンクリート製で、座面や背もたれは45ミリメートル角のチーク材に木部保護自然塗料を塗布し、メンテナンスや環境、人体への影響を考慮している。また背もたれ小口部には、ポリカーボネート板を接着し、腐食防止対策を行っている。
記念碑の陰になり、目立たないロケーションではあるが、ハートの背もたれに包まれ、同じ時間を共有したカップルは、きっと幸福な未来が待っている。
第31回「熊本の建築家作品展」(2019.07)
髙橋 浩伸 (熊本県立大学)
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相良村 石倉再生計画 基本設計

埋没されたデザイン
-天草市﨑津集落における空き家活用事例-
南島原市にある旧家を観光資源として活用するための調査研究(2015.12)
髙橋 浩伸 (熊本県立大学)
+ 照井 善明(アーキ・スタッフ設計工房(代表))



